税制改正要望とは|金融庁、NISA恒久化を要望

2019年8月21日国の政策等

金融庁の令和2年度税制改正要望の内容が明らかになったというニュースが話題です。

金融庁、NISAの恒久化要望老後資産形成へ

(リンク切れに備えて記事を要約しておくと、「金融庁の令和2年度税制改正要望の内容が判明し、それはNISAの恒久化や所得税の非課税措置を求めることを中心としたものである。老後に2千万円の蓄えが必要という報告書が反発を招き撤回に追い込まれていただけに、注目されていた。」というものです。)

早速、このニュースについて解説します!

と、その前に、まずは税制改正要望とは何かということから始めたいと思います。

そんなこと知ってるから今回のニュースについてだけ知りたい!という方は、目次から「今回のニュースについて」に飛んでください。

税制改正要望とは

そもそも、税制改正とは

税制改正とは、税の制度(税制)を改正することをいいます。そのままですね。

税制は毎年どこかしら改正されています。

なぜ毎年税制を改正するのかというと、①税制は社会経済の実態に沿ったものであるべきだから ②非常に多岐にわたる税制を一度に改正することは不可能なので、毎年少しずつ改正するしかないから ③政策的な誘導効果を狙った税制(NISAもその一例ですね)は、政治的に話題しやすいから などなど、山ほど理由はあるように思います。

ただ、一言で言えば、「税制は国家にとって最重要だから」ということに尽きます。国家の定義はいろいろありますが、「国家とは税をとって公共サービスを提供するもの」とも言えますね。

これはいつの時代も同じです。聖徳太子の大化の改新で出された改新の詔(みことのり)にも、「旧来の税制・労役を廃止して、新たな租税制度(田の調)を策定することとする。」という内容が書かれています。聖徳太子も税制改正してたんですね。

もっと昔、弥生時代の小さな集落でもきっと、「健康な大人は晴れの日には田畑を耕したり、環濠を修理したりしてください」という税(この場合、労役という労働力で納める税)が課される一方で、「働けなくなっても食べ物はわけてあげます」という公共サービスが提供されていたことでしょう。

そんなわけで、税の制度を変える、「税制改正」というのは国にとって(もちろん税を納める私たち国民にとっても)重大イベントなんですね。

税制改正要望とは

税制改正要望とは、各省庁が財務省(又は総務省)に対して来年度の税制改正の内容を要望するものです。(ほかにも地方自治体や無数の団体も国や与党に対して要望しています。)

「金融庁が要望する」と聞いて、「やりたいならできるでしょ。国なんだから。」と思う方は、「営業部が海外展開したいと思っただけでは、会社として即決定にならないな。経営管理部などと意見調整して、取締役会にかけなくては。」と考えるとわかりやすいです。金融庁の独断で税制は変えられません。ましてや税は財務省(又は総務省)の所管ですし。

国税(所得税・消費税・酒税など)に関するものであれば財務省地方税(住民税・自動車税・固定資産税など)に関するものであれば総務省に要望します。

各省庁は、それぞれが所管するさまざまな施策を推進するために、あるいは施策を推進するうえでの障害を取り除くために、「税制度をこんなふうに改正してほしい」という要望を財務省に出します。

一方の財務省(または総務省)は、国(または地方自治体)の財政を健全に保つのが仕事ですから、税収を減らすことにつながる要望については、要望を出した省庁に対し、その意義や必要性・妥当性を厳しく追及しつつ、要望実現の可否を検討します。

要望は、来年度予算を検討する前に行われます。来年度に国に入る税収の見込みが立たないと(建前上は)予算案を決められないので、予算案の前にまず、来年度の税制度をどうするかを決めるということですね。

税制改正の流れ

税制改正の流れは次のとおりです。

8月末頃 各省庁が税制改正要望を財務省・総務省に提出する

9月~11月 財務省・総務省が各省庁と調整しつつ、税制改正案を検討

12月中旬 与党税制調査会税制改正大綱(与党)が作られる

12月下旬 政府税制調査会税制改正大綱(政府)が作られ、閣議決定される

1月下旬までに税制改正法案が財務省・総務省で作られ、閣議決定を経て国会に提出される

2月~3月末 国会で法案が可決成立し、公布される

税制改正大綱(与党・政府)とは

税制改正大綱とは、「税制改正の内容をまとめたもの」です。

ちょっとややこしいのですが、税制改正大綱は2つあります。それは与党(今は自民党・公明党)が作る税制改正大綱と、政府(内閣)が作る税制改正大綱です。

作られる時期は与党が先、政府が後です。内閣は与党議員で構成されているので、どちらの税制改正大綱も内容は基本的に一緒です。

税制調査会とは

税制調査会とは、その名の通り「税制について調査・検討する会議体」のことです。税調(ぜいちょう)と略称で呼ばれることも多いですね。

こちらもややこしいのですが、税制調査会はいっぱいあります。

まずは政府の税制調査会。こちらが政府の税制改正大綱を作ります。内閣府の審議会(つまり首相の諮問機関)です。

続いて自民党の税制調査会。こちらが長年にわたり税制改正について事実上の決定権を有していました。税制に詳しい党内の有力議員(旧大蔵省出身者など)が中心となり、常に利害対立の生じる難しい税制改正を調整してきました。55年体制が崩壊し、連立政権になったり政権交代したりしたことで昔ほどではなくなったにせよ、今なお、強い影響力を持っています。

あとは各党の税制調査会です。ある程度の規模の党には複数の政務調査会(各分野の党の政策を検討する会議体)がありますが、税制調査会はその代表的なものです。

今回のニュースについて

今回のニュースは、「金融庁がNISAの恒久化を税制改正要望に組み込む」ということです。

しかし、これは実は、以前から税制改正に注目している投資家にとっては既知の内容です。

逆に「金融庁はNISAの恒久化を要望しないこととした」というニュースだったら、ショッキングな大ニュースになっていたでしょう。

よく言う「犬が人を噛んでもニュースにならない。人が犬を噛んだらニュースになる。」というアレですね。

実は、金融庁は少なくとも平成29年度税制改正要望(平成28年8月に要望)以降、今回で4回連続でNISA恒久化を要望しています。

ちなみに昨年の要望(参照:「平成31年度税制改正要望項目」平成30年8月金融庁。PDFで開きます。)にもあるとおり、ここでいうNISAとは、つみたてNISAやジュニアNISAも含みます。

「私たち個人投資家と同様に、金融庁にとってもそれほどの悲願なのか…!ありがとう金融庁!」と言いたいところですが、「要望が叶えられてない状態で、要望すべき理由がなんら失われていないのに要望を取り下げるわけがない」んです。

ちょっと違うけど、いわゆる業界団体は、毎年国や自治体に同じ要望をしています。例えば自動車業界の「一般社団法人 日本自動車工業会」(会長はトヨタの豊田章男社長)は毎年「自動車関係諸税の簡素化・負担軽減」を要望しています。それが仕事(の一部)だから。

同じように、金融庁は「日本の金融の機能の安定を確保し、預金者、保険契約者、金融商品の投資者その他これらに準ずる者の保護を図るとともに、金融の円滑を図ること」が仕事(金融庁設置法第3条)なので、「家計の安定的な資産形成を継続的に後押しする観点から、NISA制度(一般・ジュニア・つみたて)について、恒久措置とすること」(昨年度の要望から引用)を要望し続けるんです。状況が変わるか、優先順位が下がらない限り。

それでも、個人投資家として金融庁及びNISA恒久化や拡大に積極的な国会議員は応援しましょう!彼らは(ある意味)私たちの利益代表ですから。

まとめ

今回のまとめです。お読みいただきありがとうございました!またのご来訪をお待ちしております。

この記事のまとめ税制改正は国家と国民にとって重大な関心事。

税制改正要望は、各省庁から財務省・総務省へ要望するもの。

税制改正要望⇒税制改正大綱⇒税制改正法案⇒国会で成立⇒税制改正という流れ。

金融庁は、例年通りNISA恒久化の要望を出した。

がんばれ僕たち私たち(個人投資家たち)の金融庁!

国の政策等つみたてNISA, , 金融庁

Posted by fab