サーキットブレーカーとは|発動の仕組みと歴史
サーキットブレーカー制度という言葉をご存じですか。
サーキットブレーカー制度とは、株式市場や先物取引において価格が大きく変動した場合に、強制的に取引を止めるなどの措置を取る制度です。
「投資家に冷静になる時間を与える制度」と言われます。
最近では、2020年3月9日のニューヨーク株式市場で発動されました。この日はS&P500種株価指数が取引時間中に約7%下落するなど、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による世界経済への先行き不安が株価に大きく影響しました。(発動は現行制度となった2013年以来初めて)
【更新】その後、3月19日までにさらに3回も発動し、コロナ・ショックの大きさを知らしめるとともに、サーキットブレーカーそのものの効果を疑問視する声も出始めています。
サーキットブレーカーの語源
そもそも、サーキットブレーカーという言葉は、電気回路の遮断器を意味する言葉です。
一般家庭において、皆さんも「ブレーカーが落ちる」という経験はおありでしょう。電子レンジやヘアドライヤーなどを複数使用した際に、電流が過度に流れて回路が焼けることなどを防ぐために作動する、あの遮断器のことです。
取引価格が大きく動いた際に、文字通り「それ以上の過熱を防ぐために遮断する」ことから、市場における取引の強制停止制度をサーキットブレーカー制度と呼ぶのです。
サーキットブレーカー導入の契機
サーキットブレーカー制度が初めて導入されたのは、ニューヨーク市場です。
契機となったのは、1987年10月19日(月曜日)、あの有名な「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」でした。
当時は1985年のプラザ合意(先進5か国による為替レート安定化の合意)後に先進各国通貨の国際化が急速に進展した時期で、イラン・イラク戦争の末期、米軍がイランの石油基地を爆撃するなど、原油不安が高まるなど、先進諸国(石油消費国)の経済見通しが悪化していました。
ブラックマンデーについてはあらためて取り上げますが、ニューヨーク市場は投資家の恐怖が売りを、売りが恐怖を呼び、1日で22.68%という歴史的な下落となりました。
サーキットブレーカー制度はこれらを教訓に、前日終値より一定以上(7%・13%など)下落すれば一時的な取引停止とすることで投資家に冷静さを取り戻してもらう制度として導入されました。
サーキットブレーカー制度の仕組み
東証では、株価指数先物取引(日経225先物、TOPIX先物など)において、あらかじめ定められた制限値幅の上限又は下限に価格が張り付いて、1分間上限又は下限から10%の範囲外の値段で取引が成立しない場合に、取引を10分間停止するという仕組みが採られています。
ニューヨーク市場では、前日終値より7%・13%・20%にそれぞれ発動ポイントが設定され、13%まではそれぞれ15分間の取引停止を、20%となればその日は終日取引停止となります。
過去の発動例
サーキットブレーカー制度は、日本においても過去何度も発動していますが、代表的な発動例をいくつか見ると、数年に1度の市場の大混乱であることがわかります。
2001年9月12日:アメリカ同時多発テロ事件の翌日。NY市場は取引中止。日経平均先物でサーキットブレーカー発動。
2008年9月から10月にかけて少なくとも4回:いわゆるリーマン・ショックによるもの。国債先物がリスク回避のために買われ高騰したり、反動で金融不安の回避策を好感して株が一時的に高騰したりと、この年はとにかく大混乱でした。
2011年3月:東日本大震災に伴うもの
いかがでしょうか。いずれも金融市場のみならず国内外の実態経済にも大きな影響をもたらした大事件であったことがよくわかります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事の最初の執筆時点(2020年3月9日深夜)はNY市場でサーキットブレーカーが現行制度上初めて発動した直後で、我が国においても緊急事態宣言に向けた準備が進むなど、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済・国内経済の先行き不安が一層強まっています。
今後、感染拡大に歯止めがかかり、金融市場に安定が戻ることを期待します。