平成29年度厚生労働白書を読む④-第1章第3節 「分配」と「成長」の関係ー

国の政策等

厚生労働白書のカンタン解説シリーズ、第4弾です。

※平成29年度厚生労働白書についての解説です。平成30年度厚生労働白書もすでに公開されています。(厚労省HPはこちら

積立投資で人生100年時代を生き抜くには、個人の資産形成を取り巻く環境を理解することが必要との思いから、社会保障について学んでいこうというこのシリーズ。果たして需要はあるのでしょうか(弱気)。

今回は第1章第3節 「分配」と「成長」の関係 いってみよう!

今回はちょっと理論的な話なので、かいつまんでお届けします。

 

この記事のポイント「経済成長」と「格差」について

・経済成長すると、格差は拡大する

・格差は、経済成長を妨げる

「分配」と「経済成長」について

・分配は経済成長を妨げない

・分配と経済成長は一体で考えるべき

今後の社会保障について

・低所得者層の人的投資を支援する

・あらゆる立場の人々の労働参加を促す

経済成長と所得格差の関係

白書では、サイモン・クズネッツ、トマ・ピケティ、アンソニー・アトキンソンの3人の経済学者が唱えた経済成長と所得格差の関係についての理論について言及されています。

超カンタンにまとめると、それぞれ次のようなことを言っています。

サイモン・クズネッツの理論

クズネッツ氏はこう言いました。

「経済発展が進めば、その恩恵にあずかる人口の比率は高まるから、所得格差はやがて縮小していくよ」

ここから、富裕層がさらに豊かになって経済全体が拡大すれば、その恩恵が低所得層までいきわたるという「トリクルダウン理論」にも発展しました。

しかし、1980年代以降、多くの国で所得格差は拡大しています。

(出典:「平成29年版厚生労働白書」(厚生労働省)より抜粋)

ジニ係数は、数値が大きいほど所得格差が大きくなる数値です。ご覧の通り、先進諸国ではこの30年間で概ね格差は拡大する傾向にあります。

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これは個人投資家にとって見逃せない事実だね
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わっ!びっくりした!まだいたんだ。僕たちはもう登場しないのかと思ったよ。
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管理人が扱いに困っていたきらいはあるけど、いなかったことにはなってないらしい。そんなことより、所得格差は拡大する傾向にあるということはつまり「富める者はますます富む」ということだ。
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格差拡大を嘆くより、富める側にまわることが大切ってことかな。
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個人としてはそれが正しい選択だ。ただし、所得格差の拡大を放置することを是認するわけではない。「過度の格差拡大は由々しき問題だから、解決すべきだ。」というスタンスは見せながら、そーっと富める側に回る努力を続けるのが大人の態度だと思うぞ。
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なんかずるい気がする
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まったくずるくない!所与の条件の中でベストを尽くすのは当然のことだ。スポーツの試合中にルールに文句言ってるやつはいないだろ。
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そうだけど…
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最悪なのは、「格差拡大に文句は言うが努力は一切しないやつ」「富める側にいるのに、あえて所得拡大を肯定して対立を煽るやつ」、そして「努力すればすべての人が富める側に回れると思ってるやつ」だからな。
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口は悪いけど、言わんとすることはわかるよ。要はバランス感覚だね。豊かになるための努力は継続しつつ、努力ではどうにもならない環境にいる人に思いを寄せられる豚でありたいよ。

トマ・ピケティの理論

次はおなじみ、ピケティさんです。

「21世紀の資本」(2014)という本で、「r(資本収益率)>g(経済成長率)」が格差拡大の要因だと指摘しました。

「r>g」とはつまり、経済成長の過程で、資本家が経済成長率を上回る投資利益を得るということ。これにより資産集中が進むという指摘です。

日本の経済成長率は年率1%あるかないか。預金利息では絶対に上回れませんが、投資信託への積立投資では長期的にはまず達成可能な数字ですね。私たちも、小さな資産ですが経済成長を上回る資本収益率をあげて資産集中させていきたいですね。

さてピケティは、資本市場が完全になればなるほど、rがgを上回る可能性も高まるとして、格差縮小のためには資本に対する世界的な累進課税が必要だと主張しました。

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痛いところついてきましたね。

アンソニー・アトキンソンの指摘

アトキンソンは「21世紀の不平等」(2015)という本の中で、ヨーロッパで戦後縮小してきた格差は80年代以降拡大に転じたと指摘。

その理由は、

①再分配政策(社会保障制度と累進課税)の拡大、②国民所得に占める賃金のシェアの増大と資本のシェアの縮小、③個人資産の集中の減少、④団体交渉や最低賃金の引き上げによる収入の散らばりの縮小

という70年代まで続いていた減少が終わったからだといいます。

ちょっとこの本、読んでみようかな。

「分配」と「成長」の関係

白書では、このような論理展開がなされています。

「経済学では、①再分配は労働や投資の意欲を低下させる とか、②格差はむしろ高所得層の投資を増やす とか、③格差が投票行動に影響し、再分配が強まり、経済成長は抑制される とかいろいろ言われてるけど、

「効率性」を追求すると「公平性」は失われる(だから成長のためには格差は仕方ない)というのは必ずしも当たらないし、

むしろ、格差は成長にマイナスの影響があるという分析が相次いで示されている。」

格差が経済成長を妨げるという分析については、OECDの「格差縮小に向けて」(2015年)のなかで示された、「格差(ジニ係数)が大きいほど、例学歴の両親を持つ子の学力が低くなる・高等教育を受ける確率が下がる」という国際成人力調査(PIAAC)の結果が白書でも示されています。

また白書はこの節の結びの中で、今後の社会保障を考える上で重要なポイントをまとめています。

人口減少と急速な少子高齢化が進む我が国においては、分配の原資となる経済の規模が縮小し、分配自体が立ち行かなくなる危険性が常にあり、成長と分配を切り離して考えていくことはもはや難しい。そうした中、成長という視点も踏まえて今後の社会保障の展開を考えていく必要がある。

(中略)

成長という視点を踏まえると、我が国の社会保障はどのような姿が望ましいと考えられるのだろうか。

(中略)

経済社会の支え手となる現役世代、特に現役の低所得層が、自身のキャリア形成や子どもの教育などの人的投資を十分に行えるように支援するという観点からの分配政策が考えられる。これは高齢者への分配が不要ということではない。現役世代による自身の将来や老親の扶養などへの負担や不安を軽減し、将来の見通しを明るくするという観点から、幅広く考えられる必要がある。

(中略)

成長との関係から今後の社会保障を考えるとき、我が国経済社会の支え手となる現役世代やその子どもの現在や将来の生活の安定、あらゆる立場の人々の労働参加や生産性向上の促進といった観点も重要になると考えられる。

 

まとめ

では今回のまとめをもう一度。

この記事のポイント「経済成長」と「格差」について

経済成長すると、格差は拡大する

格差は、経済成長を妨げる

「分配」と「経済成長」について

分配は経済成長を妨げない

・分配と経済成長は一体で考えるべき

今後の社会保障について

低所得者層の人的投資を支援する

・あらゆる立場の人々の労働参加を促す