平成29年度厚生労働白書を読む③-第1章第2節 経済社会の変化と社会保障-

国の政策等

厚生労働白書のカンタン解説シリーズ、第3弾です!

今回は第1章第2節 経済社会の変化と社会保障です。

※平成29年度厚生労働白書についての解説です。平成30年度厚生労働白書もすでに公開されています。(厚労省HPはこちら

 

この記事のポイント・日本の社会保障は高齢者への給付が中心だが、高齢化率の高さのわりに給付水準は低い

・少子高齢化は急速に進展しているが、非就業者と就業者の人数比は横ばい

・正規雇用:非正規雇用(人数比)=6:4

・共働き世帯数:専業主婦世帯数 =6:4

高齢者中心の社会保障

我が国の社会保障制度は、国民皆保険・皆年金が特徴ですので、医療サービスを受けることが多く、年金を受給する高齢者にその恩恵が偏りがちです。

これについて白書では、社会保障制度の完成時期が高度経済成長期であったことから、

右肩上がりの経済成長と低失業率、正規雇用・終身雇用の男性労働者と専業主婦と子どもという核家族モデル、充実した企業の福利厚生、人々のつながりのある地域社会、といった当時の経済社会を前提とした制度の構築がなされている。

と指摘しています。

「先のことを考えて制度設計しておけよ!」と言いたいところですが、はっきり言って無理です。

なぜなら、「将来、少子高齢化、人口減少社会になるから、いま人口増で経済右肩上がりだけど、社会保障は充実させません!」という政治家は当選できないからです。

全てはその時々の有権者が「今を生きている」からなので、誰も責められません。

私はもちろん民主主義国家に生まれてよかったと思っていますが、同時に民主主義には限界もあると認識しています。

大衆は「苦い薬」は飲めないんですよね。

その点、消費増税を掲げても連戦連勝の現政権は異例だと思います。

消費増税が薬なのか毒なのかは、見解はいろいろですけどね。

さて、続きを読んでいきましょう。

それでもOECD加盟国と比べると低めの社会保障

対国内総生産比の社会支出の割合は、日本はOECDの平均を上回っています。

(以下、全ての図表の出典:「平成29年版厚生労働白書」(厚生労働省))

 

しかし、高齢化率と社会支出を比較すると日本は「超高齢化のわりに、社会保障給付の水準は低い」国であることがわかります。

なぜ、高齢者中心の社会保障のはずなのに、給付水準は低いのでしょうか。

理由は簡単、「国民負担率が低いから」です。

税も社会保険料も高いじゃないか!!と言いたくなりますが、

少なくとも、今の世代が実際に負担している税と社会保険料は、欧州諸国より低いのが現状です。

この図の四角囲いのある数字が税と社会保険料を合わせた国民負担率です。

確かに、日本の国民負担率は、フランスの6割程度・ドイツの8割程度と低めです。

アメリカが低いのは、そもそも「小さな政府」であることと、高齢化率が日本の半分程度であることが原因です。人口もこの30年で8,000万人増えていますし、アメリカは先進国では極めて若い国です。

さて次に、注意しないといけないのは、点線囲いの数字。これは財政赤字を含めた数字です。

国は赤字国債を発行して将来世代にも負担をさせていますので、それを入れるとドイツ並みの国民負担を最終的にはすることになりそうです。

余談ですが、ドイツの財政赤字の少なさは驚きですね。先進諸国でもダントツではないでしょうか。

日本は「低負担・中福祉」の国

国民負担率と政府の社会保障支出から、日本は「低負担・中福祉」の国と言えそうです。

図中の青い帯状の部分が、いわば「負担と給付のバランスが取れているエリア」です。

日本はそれよりも上、つまり「低めの負担で多めに給付を受けている」ということがわかります。

財政赤字の原因、わかりましたね。

このまま青い帯の外にいると、どんどん将来世代の負担が増えていきます。

それを防ぐには、「負担を増やすか、給付を減らすか、その両方か」しかありません。

でも今のままでは、そのどちらもできません。

なぜか。

高齢者がめちゃくちゃ多くて選挙に行きまくるのに、

若者はめちゃくちゃ少ないのに選挙に行かないんだもの。

私は選挙権を得てから一度も投票しなかったことはありませんが、世の中には一度も投票に行ってないような若者がいるそうなので、その人達に社会保障費は負担してほしい。

しかし残念ながら、そういう人は負担する力もなかったりします。社会って難しいですね。。

1人の高齢者を2人の現役世代で支える日本

1980年には、高齢者1人につき、現役世代は7.4人もいました。

しかし2015年には、高齢者1人につき、現役世代は2.3人

これが社会の授業で習った、あれです。

いらすとや さん的に言えば、これ↓です。

しかし、高齢化の進展に対抗する、頼れる助っ人が現れました。

それは、「就業者人口の増加」です。

就業者:非就業者はずっと1:1

不思議なことに、非就業者1人に対する就業者の人数は、ここ30年間ずっと0.91~1.05で推移しています。

なぜでしょうか。

それは、「女性労働者の増加」「高齢労働者の増加」「子どもの減少」が起こったからです。

専業主婦世帯は減少し、共働き世帯が全体の6割を占める時代です。

昔55歳定年だった高齢者は、今65歳まで再雇用されています。

そして、これは残念ですが少子化も進展してきました。

結果として、就業者:非就業者はずっと1:1で推移してきています。

それ自体良いのか悪いのかはともかく、赤字財政ながら現在まで社会保障が安定して継続してこれたのは、就業者と非就業者の比率が大きく崩れなかったことが寄与したのは間違いありません。

今後はどうでしょうか。

上のグラフのオレンジの折れ線が、非就業者1人に対する就業者の人数です。

これまでおおむね横ばいできたグラフが、2020年以降枝分かれしています。よくある「こうなったらいいな」と「このままいくとこうなる」のグラフですね。

企業のIR資料もそうですが、たまには「こうなったらいいな」すらも上振れてほしいですね。切実に。

働き方は少しずつ変化してきた

働き方改革という言葉ができて、ちょっと意味が変わってきた気がしますが、従来の意味での働き方も、この30年で大きく変わりました。

非正規雇用の増大

1984年には15.3%に過ぎなかった非正規雇用の割合は、バブル崩壊後の経済低迷や労働者派遣業の規制緩和、女性労働者の増加(専業主婦だった人がパート労働などに従事)などで、

2016年には37.5%にまで上昇しています。

近年ようやく非正規労働者の処遇改善など「同一労働・同一賃金」の実現に向けた動きが出ていますね。

また、我が家もそうですが、共働き世帯もここ30年で大きく増え、

共働き世帯数:専業主婦世帯の数は6:4になっています。

まとめ

いかがだったでしょうか。

参議院選挙が行われていますが、候補者の政策を見るときは、負担と給付のバランスなど、現実的な選択肢を示しているかどうかにも注目したいですね。

「低負担・高福祉」はありえません。私も、自分たちアラサーと次世代のために、しっかり将来を考えて投票したいと思います。

 

この記事のポイント再び・日本の社会保障は高齢者への給付が中心だが、高齢化率の高さのわりに給付水準は低い

・少子高齢化は急速に進展しているが、非就業者と就業者の人数比は横ばい

・正規雇用:非正規雇用(人数比)=6:4

・共働き世帯数:専業主婦世帯数 =6:4

 

番外編予告:社会保障と税の一体改革

 

記事が長くなりましたので、社会保障と税の一体改革については番外編として別途お送りします!!

乞うご期待!!