はじめてのふるさと納税
総務省が「ふるさと納税に関する現況調査結果」を発表しました。
それによると、昨年平成30年度のふるさと納税受入総額は全国1,788団体で合計約5,127億円に達し、前年度比約1.4倍と激増しています。
昨年は過熱しつづける返礼品競争が取り沙汰され、ふるさと納税自体が注目を浴びたということもありますが、少ない自己負担額で全国各地の特産品をゲットできるお得な制度として定着してきたことの証でしょう。
当ブログでも、iDeCo・つみたてNISAに次ぐ第三の「国が用意したお得な制度」として、取り上げていきます!
今回は「はじめてのふるさと納税」と題して、ふるさと納税の仕組みとはじめかたについてご説明します。
この記事からわかること・ふるさと納税とは何なのか、仕組みと国の狙い
・ふるさと納税のはじめかた、ワンストップ特例と確定申告
・ふるさと納税の問題点(!)
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は「納税」じゃない?
ご存じの方も多いですが、ふるさと納税で私たちが各地方自治体に支払うのは「税」ではなく「寄付金」です。
住民税などの地方税は、私たちが住む地方自治体から受ける行政サービスの対価という面がありますから、全然関わりのない地方自治体にお金を払ったとしても、それが納税でないのは当然ですよね。
ふるさと納税は、地方自治体に寄附を行った金額のうち、2,000円を超える部分について、所得税及び個人住民税が控除されるという制度です。(ただし全額控除される寄付額には上限あり)
もともと、個人住民税には寄附金税制という制度がありました。地方自治体や赤十字社、NPO団体などの公益団体に寄附を行った場合に、その寄付金の10%分が税額控除されるというものです。
ふるさと納税は、それを拡充し、寄付金の全額(2,000円を除く)を控除することとしたものです。
ふるさと納税はどうお得なの?
ふるさと納税がお得な制度とされるのは、なんといっても返礼品のおかげです。
返礼品がなければ、ただ2,000円を負担して地方自治体に寄附するだけの制度です。それでも寄附をしたいという考えは、それはそれで素晴らしいことだと思うのですが…損得勘定だけで言えば損ですよね。
ふるさと納税は、2,000円の自己負担額で、食料品を含む返礼品(多くは2,000円以上の価値があるもの)がもらえるからお得なんです。
ふるさと納税は、「誰得」なの?(国はなぜこの制度を作ったの?)
ふるさと納税は、返礼品をもらうことになる寄付者にとってお得なのはわかりました。
でもいったい、何のために国はこの制度を作ったんでしょうか。「誰得」なんでしょうか。
ずばり、人口減少などから税収不足に悩む田舎の自治体のためです。
田舎の自治体の悩みは、「子どもたちの成長のために学校や図書館・公立病院など自治体にとっても多額のコストがかかったのに、子どもたちは高校卒業とともに都会に出てしまって帰ってこないから、納税してもらえない」ということです。
そんな田舎の自治体にとって、ふるさと納税で多額の寄付を募ることができれば、ちょっとくらい返礼品を出したって、お得なんです。
また、国にとってもお得な面があります。
ふるさと納税を所管している国の省庁は、総務省です。総務省の所管業務は極めて広範ですが、地方自治体の行財政を支える役割も担っています。
そんな総務省の長年の悩みの種は、税収が東京都に一極集中していて、それ以外の全ての道府県及びほとんどの市区町村では税収が不足していることです。
東京都には、人や企業が集中していますので、そのぶんだけ税収が多くなるのは当然なんですが、税の仕組み上、人や企業があるまっている分以上に、税金はもっと集まってしまうのです。
例えば、埼玉千葉神奈川の三県から全従業員が通勤している会社が、東京都にしか事務所を構えていないとしたら、従業員は三県に納税しますが、会社は東京都だけに法人都民税などを納税しますよね。ほかにもいろいろありますが、簡単にいえば、これが税収を極端に東京都に偏らせている原因です。(東京一極集中も別記事にします)
総務省は、多くの地方自治体が自立して行政経営ができるようにするのが仕事ですから、露骨には言いませんが、「東京都(やその他の大都市)から、田舎の県・市町村に税収を移してやってくれ~」という思いがあるのです。
その思いを酌んでか、全国の地方自治体で唯一、東京都だけはふるさと納税の受け入れ先になるための申請を出していません。
以上のように、ふるさと納税は、「寄付する私たち」「寄付を受ける寄付先自治体」「税収の偏りを気にしている総務省」にとってはお得な制度です。


ふるさと納税のはじめかた
ふるさと納税の手続き
ふるさと納税の手続きは次の通りです。
①寄付をする地方自治体と返礼品を選ぶ
②寄付をする金額を選ぶ
③クレジットカードなどで支払いをする(寄付)
④返礼品を受け取る
⑤税の控除のための手続きをする
このうち、①~③は、いわゆるふるさと納税サイト(「ふるさとチョイス」「さとふる」「ふるなび」など)でネットショッピング感覚で行うことができます。④は宅配便を受け取るだけ。
今回は、はじめてふるさと納税をする人にとってちょっとだけ不安な⑤税の控除のための手続きについて解説します!!
ふるさと納税ワンストップ特例を使う方法(難易度:かんたん)
ここ数年でふるさと納税が爆発的に流行したのは、「ワンストップ特例」という「かんたんにふるさと納税できちゃう仕組み」のおかげ(が半分、総務省を怒らせた「返礼品競争の過激化」のおかげが半分)です。
以下、ワンストップ特例を解説します!
ワンストップ特例とは、「確定申告がいらない給与所得者(サラリーマン)等がふるさと納税を行う場合に、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄付金控除を受けられる仕組み」のことです。
ただし、この特例を使えるのは、1年間で寄付をする自治体数が5団体以内の場合です。
特例を受けるためには、ふるさと納税を行う際に各ふるさと納税先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出する必要があります。
申請書は、寄付の際にふるさと納税サイトで申し込めば、寄付先自治体から送付されてきますので、必要事項を記入して寄付先自治体に郵送しましょう。
ワンストップ特例のまとめ以下の条件にあてはまる場合に、適用されます。
①もともと確定申告をする必要のない給与所得者等であること
②1年間で寄付をする自治体数が5団体以内であること
③寄付をする際に、特例の申請書を郵送していること
(マイナンバーと本人確認書類が必要です)
確定申告をする方法(難易度:ふつう ~ ややむずかしい)
こちらが難易度:ふつう ~ ややむずかしい のコースになります。
なぜ難易度に幅があるかというと、こちらを利用するのは、「いつも確定申告している人」「6団体以上の寄付を行った人」「ワンストップ特例の申請書を提出しなかったうっかりさん」のいずれかです。
「いつも確定申告をしている人」にとっては、いつもの申告内容に「寄付金控除」に関する内容を加えるだけです。ネットで確定申告も浸透してきましたので、ほぼ自治体名や寄付額を入力するだけの「ふつう」の手続きです。
「6団体以上の寄付を行った人」には、いろんなタイプがいるので人によって感じる難易度は違うでしょうね。
しかし!
「ワンストップ特例の申請書を提出しなかったうっかりさん」のあなたは、ちょっぴり心配です。
確定申告が必要ないサラリーマン(確定申告については別記事にします)にとっては、未知の手続きである確定申告をしなければなりません。
やってみるとそんなに難しい手続きではありませんので、各ふるさと納税サイトも参考にしながら、国税庁のホームページ「国税庁 確定申告書等作成コーナー」から確定申告書を作成し、電子または印刷して書面で税務署に提出しましょう。
ただし、e-Tax(国税庁の電子申告のシステム)を利用して提出するためには、マイナンバーカードもしくは税務署で発行された専用のID・パスワードが必要ですので、ご注意ください。
ふるさと納税に関する確定申告のまとめ・いつも確定申告をしている人にとっては、寄付金控除を加えるだけ
・ワンストップ特例の申請書を提出しなかったうっかりさんは、国税庁ホームページや税務署で確定申告書を作成しないといけない
⇒いつも確定申告をしない人は、必ずワンストップ特例を利用しましょう!
ふるさと納税の問題点
返礼品競争の過激化に見る、ふるさと納税の負の側面 (問題提起です)
以上のようにふるさと納税は、比較的かんたんな手続きと2,000円の自己負担額で返礼品が受け取れるお得な制度であり、税収不足の田舎の地方自治体にとってもお得な制度です。
しかし、それゆえに返礼品の豪華さを競って、できるだけ多くの寄付を集めようという自治体が多くなりました。いわゆる「返礼品競争の過激化」です。
寄付額の半分以上をお礼として返してしまうようなことも珍しくありませんでした。令和元年6月からは、返礼品は寄付額の3割以下、というルールができました。このルールに従わなかった4自治体は、ふるさと納税の寄付先として認めないと総務省が発表したことで話題になりましたね。
この一連の騒動に関連して、
「高額の返礼品で何が悪いんだ!」「地方自治体が工夫して競争するのはいいことだ!」「寄付する私たちにとってもいいことだ!」という人もいます。
しかし、本当にそうなんでしょうか。
寄付をして、税金が減るということは、あなたの住んでいる市区町村の税収が減るということです。
あなたやご家族が普段利用している道路や学校、公立病院、図書館などは、市民みんなで集めた税金で整備されていますので、あなたが納める税金が減ると、そのぶんだけあなたが受ける行政サービスの原資は減少します。
また、返礼品を用意する寄付先自治体にとっても、「本当は全額寄付として受け取りたいけど、返礼品がないと寄付してくれないから、高額の返礼品を買って送ろう」ということなので、実際は多くの自治体にとって、ウハウハではありません。




















ふるさと納税で得する人・損する人一番得する人:返礼品の生産者とふるさと納税サイトの運営者。寄付受け入れが多い自治体に住んでいて、自分もどこかにふるさと納税している人(税収増・税負担減のダブルお得!)
やや得する人:寄付受け入れが多い自治体
やや損する人:寄付受け入れが少ない自治体と、そこに住んでいるが自分もどこかにふるさと納税している人
一番損する人:寄付受け入れが少ない自治体と、そこに住んでいてふるさと納税していない人(税収減・税負担そのまま)



まとめ
ふるさと納税は、自己負担額2,000円で、返礼品が受け取れるお得な制度!!
いろいろ問題点もありますが、結局は利用しないと損な制度です。
返礼品を選ぶのも楽しいので、この機会にぜひやってみてください!!
私が、資産形成的な視点で見たおすすめ返礼品は、なんといっても「返礼品でもらわなくても必ず普段から購入している系」のものです。(別記事にします)
れっつ えんじょい ふるさと納税!
