【書評】投資で一番大切な20の教えー賢い投資家になるための隠れた常識ー(ハワード・マークス 貫井佳子[訳])

2020年5月6日書評

賢い投資家とはどんな投資家でしょうか。

今回は「賢い投資家になるための隠れた常識」という副題を持つ、『投資で一番大切な20の教え』という本の紹介です。

これを読めば、賢い投資家に一歩ではなく十歩近づくでしょう。


 

 

どんな本?

この本は、運用資産800億ドル以上を誇る投資会社オークツリー・キャピタル・マネジメントの会長兼共同創業者であるハワード・マークス(Howard Stanley Marks)という投資家によって書かれました。

マークス氏が顧客に投資戦略や経済情勢への洞察を伝える「オークツリー・メモ(Oaktree memos)」は米国の投資家の間で有名で、この本はそのメモを基に書かれたものです。

あの世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏は、

ハワード・マークスからの「顧客向けレター」が届くと、私は何をおいても必ず真っ先に読むことにしている。本書は極めて稀に見る、実益がある本である。

との言葉をこの本に寄せています。期待大!!

内容紹介

タイトルどおり、投資に関する「隠れた常識」が20個に分けて記述されています。

そのすべては紹介できませんが、私が注目したものをいくつかご紹介します。

②市場の効率性(とその限界)を理解する

マークス氏はこの章で「効率的市場仮説」について次のように解説します。(要約)

効率的市場仮説が想定する市場・市場の参加者は情報を同程度に入手する。参加者は知的で客観的な目を持ち、意欲的で努力を惜しまず、広く普及している分析モデルを用いている。

・場参加者の力が結集し、情報は完全かつ即座に各資産の市場価格に反映される。参加者が安すぎる資産を買い、高すぎる資産を売ることで、価格は公正な水準になる。

・よって市場価格は資産の本質的価値の正確な推計値であり、参加者は不公正な価格を認識したり、そこから利益を得たりすることはできない。

これに対して、マークス氏は1年で株価が20分の1以下になった銘柄の例を挙げながら、効率的市場仮説の部分的な間違いを指摘しつつ、こう結論付けます。

市場の効率性に対するマークス氏の結論市場はしばしば資産の価値を見誤るが、ほかの参加者と同じ情報をもとに動き、同じように心理的な影響を受ける個人が、コンセンサスとは異なる、そしてより正確な見方を持ち続けるのは容易なことではない。だからこそ、市場がいつも正しいわけではないにもかかわらず、主流の市場でアウトパフォームすることはきわめて難しいのである。

インデックス投資家であれば、「そのとおり」と首肯する内容ではないでしょうか。

本書では「効率的市場仮説」と実際の市場との乖離について、マークス氏がさらに詳しく解説されていますので、関心のある方はぜひ読んでみてください。

⑦リスクをコントロールする

こちらも重要なので、普段から意識されている投資家は多いと思います。

マークス氏曰く

すぐれた投資家はリターンを生み出す能力と少なくとも同じくらい、リスクをコントロールする能力を持っているという点で卓越している。

(中略)

獲得するリターンに相応する水準よりも低いリスクをとる者こそ、すぐれた投資家だと私は考える。つまり、低いリスクをとってほどほどのリターンをあげたり、ほどほどのリスクをとって高いリターンをあげたりする者だ。高いリスクをとって高いリターンを達成しても、ほとんど意味はない。

なるほど、これはともするとリターン至上主義に陥りがちな我々投資家にとって、耳の痛い、重要な指摘である気がします。

例えば、プロ野球で1シーズンに10本だけ超特大の場外ホームランを打つけれど、普段は打率2割にも満たない無茶苦茶なフルスイングをする選手がいたとしても、評価されません。

ところが株式投資の世界では、「100万円が1年で1,000万円になった!」という人が注目を集めたりします。それが例え、「無茶苦茶なフルスイングで開幕戦で場外ホームランを打った」に過ぎないとしても。

大事なのは「100万円が1年で1,000万円になる」=「ある試合で場外ホームランを打つ」ことではなく、

「運用期間30年のうち25年を、『100万円が1年間で110万円になる年』にする」=「シーズンを通してコンスタントに長短打を打ち、チームの勝利に貢献する」ことです。

余談ですが・・・(本書の内容から脱線)

ちなみに、100万円を元手に30年間年利10%で運用できた場合、30年後に1,745万円になりますが、極めて困難です。

30年のうち5年目・10年目・15年目・20年目・25年目に運用資産が1割減少しても、残りの年に1割増加した場合、30年後は約640万円になり、こちらはまだ現実的です。

しかし、資産減少年の減少率が2割だった場合、30年後は355万円。3割だった場合、182万円。

さらに、仮に資産減少年の減少率が5割だった場合は34万円と、30年間運用して資産が3分の1に減少する結果に。。

重要なのは、数年に1回来る暴落時に致命傷を負わないことだ、というのがよくわかりますね。

⑪逆張りをする ⑬我慢強くチャンスを待つ ⑰ディフェンシブに投資する

その他の「大切なこと」はタイトルの紹介のみにとどめます。

これらのそれぞれの章に、マークス氏の経験と知識に基づく様々な含蓄のある解説がなされています。

章のタイトルはいずれも「それはわかってる」と思いがちなことですが、「当たり前のことを、それがなぜ大切かを理解したうえで、実践する」ということの難しさは、私たち自身がよく知っているはずです。

まとめに代えて:賢い投資家は1日にして成らず

賢い投資家になるための20の隠れた常識を紹介する本書。

20番目の「隠れた常識」、それは

『⑳すべての極意をまとめて実践する』です。

これは一朝一夕に達成できることではありません。自分が投資家として今なにをすべきかを意識して、一歩一歩進んでいくことなしに、賢い投資家にはたどり着けないのです。

「人生100年時代を生き抜く」ための手段の一つとして、数十年にわたる投資家としての歩みを進めてみませんか。

ぜひ本書を手に取って、「賢い投資家になるための隠れた常識」に触れ、その第一歩を踏み出してみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。またのご利用お待ちしております。

書評

Posted by fab