【書評】となりの億万長者〔新版〕成功を生む7つの法則(トマス・J・スタンリー&ウィリアム・D・ダンコ 斎藤聖美[訳])
億万長者に直接会ったことはありますか? 私はありません。
億万長者とはどのような人たちなのでしょう。また、何が彼らを億万長者にしたのでしょう。
実際に会って話を聞かなくても、この『となりの億万長者』を読めばその実像が見えてきます。
そして、冒頭の問いかけの真の答えが、「実は会ったことがあるが、億万長者だとは気づかなかった」である可能性に気付くのです。
億万長者(ビリオネア)とは
億万長者とは、金融資産保有額が1億円以上の人をいうのが一般的です。
この定義は、金融業界などで用いられる富裕層・超富裕層の定義とも重なります。日本には126.7万世帯(2017年)いるとされます。
(出典:野村総研が2018年12月18日に公表した調査結果報告)
『となりの億万長者』は米国で出版された本が原書ですので、取り上げられている億万長者(ビリオネア)とは世帯の金融資産が100万ドル以上の人だと定義しています。米国の全世帯に占める割合は3.5%だということです。
内容紹介:成功を生む7つの法則
『となりの億万長者』で億万長者に対して行った調査からわかった「資産を築く成功の秘訣」とされているのは、次の7つです。
1 彼らは、収入よりはるかに低い支出で生活する。
2 彼らは、資産形成のために、時間、エネルギー、金を効率よく配分している。
3 彼らは、お金の心配をしないですむことのほうが、世間体を取り繕うことよりもずっと大切だと考える。
4 彼らは、社会人となった後、親からの経済的な援助を受けていない。
5 彼らの子供たちは、経済的に自立している。
6 彼らは、ビジネス・チャンスをつかむのが上手だ。
7 彼らは、ぴったりの職業を選んでいる。
どうですか、実に堅実で、私たち積立投資家好みではありませんか?
大きなリスクを背負うごく一部の派手な成金よりも、時間をかけて地道にコツコツと億万長者にたどり着く7つの法則。
『となりの億万長者』は、これら7つの法則について一つずつ詳しく取り上げられています。
ここからは、その中でも私が最も気に入った法則について、感想を交えて紹介します。
収入よりはるかに低い支出で生活する
この法則を取り上げた章のタイトルは「倹約、倹約、倹約」。いいですねぇ。
横道にそれますが、倹約という言葉を重ねたこのタイトルはただ印象的であるだけでなく、「ただひたすら○○する」という姿勢を感じさせ、日本人好みだなと感じます。
「前進前進また前進」(明治時代に作られた軍歌『歩兵の本領』の歌詞の一節。それをもじったザ・ドリフターズ主演映画(『ドリフターズですよ!前進前進また前進』)もある。)とか、
「一に○○、二に○○、三四がなくて五に○○」(漫画『とっても!ラッキーマン』に登場する努力マンは「一に努力、二に努力、三四がなくて五に努力」という登場セリフを持っていましたね。)とか、結構よく用いられてますよね。
私たち積立投資家からすれば、「積立積立また積立」「一に積立、二に積立、三四がなくて五に積立」でしょうか。ただひたすら資産形成の道をいきましょう。
さて、話はもどって、『となりの億万長者』の「倹約、倹約、倹約」では、億万長者たちの実につましい生活っぷりが綴られています。
1000万ドルを優に超える資産をもつある投資家が高級ワインを勧められたときに放ったセリフが面白いので紹介します。
私はスコッチかビールしか飲まんよ。ビールは二種類。バドワイザーかタダで飲めるヤツだけだ。
億万長者にステレオタイプな「億万長者らしさ」を求めていた調査初期の筆者たちを閉口させたというこのセリフには、億万長者は浪費をしないという(私たち個人投資家にとってはもはや今さら言うまでもないことですが、一般的には)意外な事実が凝縮されています。
億万長者に近づく最も確実な方法は、「収入の範囲内で生活する」ということです。それも「はるかに」低い支出で。
本多静六氏の『私の財産告白』にも、「給料を四十円もらったら、三十円しかもらわなかったと思って十円天引きすればよろしい。」と記されていましたね。
また、ビジネス書の古典的名著と呼ばれる『バビロンの大富豪』も、欲求と経費を混同するなという趣旨で浪費を戒めていました。
このブログでも資産形成の最初の一歩は「毎月の黒字」だと繰り返しお伝えしてきました。
『となりの億万長者』によれば、億万長者は「収入よりはるかに低い支出で生活する」のですから、私流に言い換えれば、億万長者は「毎月の圧倒的な黒字を維持している」と言えます。
億万長者を目指すあなたは、「毎月の圧倒的な黒字」からその歩みを始めましょう。
収入が少ないですって? ならばその分だけ圧倒的に支出を減らしましょう。「倹約倹約また倹約」です。
まとめに代えて:億万長者は「となり」にいる
都内ではありませんよ。「となり」です。都内にもたくさんいますけどね。
この本のタイトルが『となりの億万長者』(原題『The Millionaire Next Door』)である理由、それは「億万長者はどこにでもいるが、私たちはそれに気付かない。億万長者の多くは普通の家に住み、普通の生活をしている。高級車や高級なスーツなど、世間体を取り繕うための様々な浪費をしなかったからこそ、彼らは億万長者になった」という事実を端的に表すためだと思います。
私やあなたの隣人が億万長者でないと、どうして言えるでしょうか。同じ家賃を支払い、同じような生活をしていても、億万長者は確かにいます。
私たちも、今と同じ生活を続けながら、億万長者への道のりを進んでいきたいですね。
『となりの億万長者〔新版〕成功を生む7つの法則』を読めば、億万長者がどのような姿勢で生きてきたかがよくわかり、倹約のモチベーションが上がります。また、なんでもないところに億万長者への道が開けているという気付きが得られるので、おすすめの一冊です!
最後まで読んでいただきありがとうございました。またのご利用お待ちしております。